【第3回】今いるのがポルトガルで良かった、そして日本にはもう戻れないかも・・・と思う理由
ボア・タルドゥ!
リスボン外出自粛生活32日目。ついに丸1か月以上経ちました。
ニュースで流れるリスボンの街には人や車がほとんどいません。しかし、賑わっているとまではいかないものの、近所には普通に人がいます。そのほとんどが犬の散歩、食料買い出し、銀行などでの所用・・・そして、道路に立って、バルコニーから顔を出しているご近所さんとおしゃべりしている人もいます。自粛生活は、やっぱりみんな寂しいんですよね・・・。
日本のニュースで、週末は主要駅に人がほとんどいなかったのに、平日の東京は通勤する人たちがいつものようにたくさんいて驚きました。2メートルの距離保ててるのかな・・・と心配になります。リスボンの地下鉄はどうなんだろう・・・?ちなみに、バスは運転手を感染から守るため、前方のドアは使用せず、運転席周りの席も塞がれているため、「運賃無料+各駅停車」の措置が取られています。時々見かけるバスはほぼ空車状態です。
さて、ポルトガル・リスボンに来て半年足らずの私が、日本、アメリカ、ポルトガル生活を経験してみて、今感じること・考えることをシェアするシリーズ第3回目です。
前回までは、政府の指示を待たず、自分の判断で自粛を始めたポルトガルの人たちと、大統領をはじめポルトガル政府がどんな対策を講じてきたかを書きました。今日は、ポルトガルのメディアや企業についてです。どうぞ、よろしくお願いします。
冒頭の写真
いつかのごはん:サーモン、ブロッコリーとアンチョビのパスタ+赤ワイン
誰もいない街の様子を称える
テレビも自治体などの機関も、誰もいない街の様子を紹介しています。すべて、「#FicaEmCasa」、「#FiquemEmCasa」など、「お家にいよう」キャンペーンの一環。
ポルトガルらしい渋い雰囲気のものが多いですが、「みんなもいろいろ我慢してるんだから、私も家にいなきゃ」と思えるので、個人的にはこういうのどんどんやったらいいと思います。
ポルトガル第二の都市ポルト(Figuem em casa 2020)
初期の頃、感染が最も激しかった北部の都市ポルト。「こんな静寂に包まれながら、これほど街がひとつになったことはない。ポルトは負けない」というメッセージを映像に載せています。
ポルトガル首都リスボン(Lisboa Ainda)
こちらはリスボン市が公開したビデオ。「街から人は消えたけれど、ファドやポエムがある。閉じ込められた中で、リスボンは開花する。がんばっている」というメッセージ。
ポルトガル観光局(Can't Skip Hope)
「ポルトガルの美しい風景はどこにも行かない。だから、今は世界のために立ち止ろう」という英語のナレーション。「お願いだから今はポルトガルに来ないで」というネガティブなメッセージをポジティブに表現しています。
*2019年以前撮影された映像を使用しているため、一部たくさんの人が写っています。
ニュース番組では日常を支える人たちを紹介
毎日、1〜2時間はポルトガル語の勉強のためにもテレビでニュース番組を観ています。とても聞き取りづらいポルトガル語ですが、ニュースを読むアナウンサーは、本来の発音に忠実にはっきりと喋ってくれるのがありがたいです。
決まって放送されるのは、保健大臣と保健総局(Direção Geral de Saúde)による会見。過去24時間に新たに判明した感染者や死者、回復者の数など、新型コロナウイルス感染についての情報をアップデートします。
最近は、その他も関連ニュースがほとんど。今日は、教育大臣がオンラインでの学校運営について話していました。教員たちはクラスの準備ができているが、コンピューターを持たない生徒が何人いるか把握できてない、などと話していたと思います。
その中に「がんばっている人たち (Os Resistentes)」というコーナーがあります。私たちの日常を支えるいろんな職業の人たち、バスの運転手、ゴミ回収業者、スーパーマーケットの従業員、郵便配達員などの仕事を、その人の目線と言葉で淡々と紹介するのです。言葉が分からなくても、その人の置かれている状況や感情は擬似体験でき、感謝の気持ちが湧き上がります。
ゴミ回収をする女性を紹介した回(↓)
また、FBでシェアされたのですが、医療現場で撮影された写真を募集し、編集してニュースで流したものです。こちらも彼らの置かれている環境の過酷さが伝わり、これ以上感染者を増やさないために家にいなければという気持ちにさせられます(↓)
ミュージシャンも「コロナに打ち勝とう」キャンペーン
テレビコマーシャルやSNSでも、「家にいよう(#FicaEmCasa、#FiguemEmCasa)」を呼びかけています。
大手メディア会社のテレビCM
家にいながら、みんなで繋がろうというメッセージを発信(↓)
大手スーパーマーケットとテレビ局のタイアップ
「諦めないで(#NuncaDesistir=Never give up)」のキャッチフレーズ。出てくる人たちは有名人みたいです。
Nunca Desistir | Domingo na TVI
「すべてはきっとうまくいく(Vai Ficar Tudo Bem)」
ミュージシャンは歌で励まします。
学生と卒業生たちが奏でる「希望のセレナーデ」
コインブラの学生が21か国130人の学生と卒業生を集め、「希望のセレナーデ」をオンラインで合奏&合唱。「困難な時間をみんなで乗り越えよう」と呼びかけました。
Serenata de esperança a Portugal
希望が持てるポジティブな話題も・・・
国民の外出自粛のモチベーションを保つようなコンテンツをメディアや政府機関をはじめ、ミュージシャンやインフルエンサーが発信するのはとてもいいことだと思います。
誰もいないリスボンの街を見れば、「私だけじゃない、みんな頑張ってる」って思えるし、言葉に勇気づけられ、音楽には癒されます。
それでも毎日増え続ける感染者と死者数。そんな暗いニュースの中にも、医療従事者に食事を差し入れるレストランやホームレスに食事を配る警察官など、希望を見出せるような話題も時々ニュースで流れます。
毎夜10時に「医療従事者に感謝し、激励する」拍手喝采も続いています。
観光業や外資で経済復興を遂げたポルトガルですから、経済的打撃は計り知れないと思います。「支払いが遅れても水道、電気、ガスなどのライフラインは止めない」、「手続きが滞っている外国人も特別措置として市民と同じに扱う」という他に、どのような経済支援策を実施しているのかは定かではありません(次回までに調べておきます)。
しかし、政治家の言動や国民の様子を見ていると、どんなに打撃を受けても、きっとポルトガルは弱者を見捨てない・・・究極政府が食べ物を配給してくれるに違いない・・・という不思議な安心感があります。
以上、「今いるのがポルトガルで良かった」と思う理由でした。次回からは、アメリカや日本について書いていこうと思います。